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『ボブ・ディラン:ノー・ディレクション・ホーム』

ボブ・ディラン・ネタがらみの某映画が公開ということで旧作から関連記事というか感想文を旧ブログから引っぱりだしてみました。(使い回しともいう…)DVDもレンタルに出ています。
件の新作は近日中に鑑賞の予定。

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Bob Dylan - No Direction Home

 歌い手を夢見てニューヨークに出た青年ロバート・ジンマーマンが、ウディ・ガスリーに憧れその作品を模倣したり様々なアーティストのスタイルを吸収しつつ“ボブ・ディラン”という1アーティストとなり、築き上げた自分のスタイルを大衆が支持しようとしまいと貫き通した、というか今も通し続けている姿の実体を、デビューから一大転機となる66年の一連のブーイングライブそして事故によるライブ活動休止までの年月に焦点を当ててディラン本人や諸アーティスト関係者の証言、そして当時の映像で追うドキュメンタリーです。 監督はエレキ騒動時点でディランのバックバンドを務めていてその10年後に華々しく解散したThe Bandの“最後のワルツ”を映像に収めたM・スコセッシ。
 冒頭からいきなり映し出されるのは1966年のライブ風景。「ライク・ア・ローリング・ストーン」の演奏に湧き上がる場内。ところがよーく聴いてみるとそれは決して歓声だけではなくてブーイング、それも相当数の罵声が浴びせられていることに気がつく。いったい何事がおこっているんだろう?
 「風に吹かれて」「激しい雨が降る」など世間でいうところのポリティカルソングをアコースティックギターとハーモニカの調べに乗せて送り続け、カリスマ・フォークシンガーとして注目を浴びてきたボブ・ディラン。それまでの社会の風潮、家の制度、政治家にまで若者世代や社会的に弱い立場のものの代弁者として崇められてきた彼が突然ギターをエレキに持ち替えた時、彼のそれまでの曲に良心、何物にも屈しない心を重ねてきた人々は、ファンも 同業であるフォークシンガーでさえも戸惑い、彼らが忌み嫌うところの商業主義に転じてしまったのかとその“変身”を裏切りのように感じたりととにかくすごい衝撃を与えたことが劇中のインタビューや映像から分かるし、またそれによってディランもまた傷ついたことも語られます。

 正直わたしはボブ・ディランがなぜそこまで神格化というか崇められてるのか分かりませんでした。というのもほっぺのふっくらした美少年時代はもちろん知らないし、洋楽を聴くようになって気がついた時、すでに彼はウニャウニャ歌詞をはき出すみたいに歌うというかしゃべってる 目つきの悪いくたびれた雰囲気のおっさんにしか見えなかったし。「風に吹かれて」や「Mr.タンブリングマン」はPPMやジョーン・バエズだったりバーズのバージョンのほうが馴染みがあったし、のちにディランのオリジナルを聴いてもそれが「ライク・ア~」と同じ歌手の手によるものとはピンと来なかったというのもあります。ところが…。持ち替えた道具は時代とともにアコースティックからエレキに変わったとはいえ、彼のスタイルというのは最初から今まずーっと一貫されていたのですね。

 時代の潮流に乗ったアーチストは、自分の本音がどうであれ、一旦大衆側に支持された以上はそれと一緒に歩まざるを得なくなって、立場だったり影響力を気にするものではないかと思うけれど、彼の場合はその曲に・歌詞に大衆がぞろぞろと付いてきた。ジョーン・バエズの歌を聴いたり映像を見ていると何かが憑いているというかちょっと尋常ではないものを感じるし、本作中で語られる本人のインタビュー聴いても共闘意識というか自分が何かをしなくてはいけないのだという立場をすごく意識しているように感じるのですが、それはディランとはあきらかに違う。もちろん彼にも人の心に訴えるのならガスリーみたいなスタイルで行くのが手っ取り早いというわりと安直にみえるとっかかりはあったろうけれど、誰に媚びることもなく自分の言いたいことをいって他人がついて来ようが来まいが構わない。レベル(Rebel)というのはこういうことなんだろうなって思ったし、ようやくすごい人なんだというのが分かりました。

 しかしディランがスタイルを変えて最初に出したアルバム用のプレス会見?をしている時に、彼が着ているTシャツにまでなんらかの意味があるのでしょ?なんのメッセージがあるのですか?と真顔で食い下がる若いインタビュアーの姿は怖いというか悲しいというか…。一歩間違った狂信的な人が命を狙わなかったのが幸いだったようにも思うけれど、だけど彼のような若者もまた大きくうねりながら流れていく時代の中で自分たちがどこへ行ってしまうのか行き先が見えずに途方に暮れていて、そんな自分たちの気持ちを代弁してくれるような“旗振り役”を切実に望んでいたということなのでしょうね。そんな当時の世相も伺える興味深い作品でした。

原題:Bob Dylan No Direction Home 監督:マーティン・スコセッシ
出演:ボブ・ディラン他(ドキュメンタリー)
@イメージフォーラム
'06 3/28鑑賞
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2コメント

ぷくちゃん  

上京した時にすかさず観てしまいました。どちらかと言えばヒース・レジャー目当てなのですが。

この映画、不思議な映画ですが素晴らしい出来でした。ディランの音楽がこれほど説得力があったのは、私には初めてでした。もっと聴こうかな、ってな感じです。

2008/04/27 (Sun) 22:49 | EDIT | REPLY |   

mako  

ぷくちゃんさん♪

こめんとありがとうございますー。
おー、『アイム・ノット・ゼア』、さっそくご覧になったんですね! 予告を見る限りじゃいろんなディランっぷりが楽しめそうでしたね。ヒースの場面は「フリーホイーリン~」のジャケのよう。また、ケイト・ブランシェットの場面はちょうどこのドキュメンタリーのインタビュー場面を思い出しました。わたしも早くみたいです!
鑑賞したらそちらに伺いますねー。

2008/04/28 (Mon) 00:16 | EDIT | REPLY |   

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